おじさん

俺は都内の大学に通っている、文学部の3年生です。

 

今は大学近くのサイゼリヤにいるんですが、隣の席にちょっとやばいおじさんが座っています。ちょっとやばいおじさんというのは、ヒゲが中途半端に長くて、鉛筆の匂いがするおじさんのことです。おじさんってある程度のヤバさが加わると鉛筆の匂いがしませんか?

 

このおじさん、俺が入学した時からずっと大学にいて、同じ授業も受けてたりします。ちゃんと学費を払ってる学生なのかはよく分からないんですけど、1年生の時は俺と授業が被りまくってて、マジのストーカーかと思ってた時期がありました。なぜか一度だけ俺の家の近くに立ってたことがあって、その時は「モノホンだ!」と思って遠回りして帰ったんですけど、それからなんの被害もなかったので、多分ただの徘徊でした。

 

そんな状態で3年間、このおじさんとともに大学生活を送ってきて今、隣に座っているわけです。そしてさっき、おじさんが店員さんを呼んで注文をしたんですけど、俺はそこで初めておじさんの声を聞きました。意外性のない、想像の範疇にあるおじさんの声でした。青豆の温サラダと白ワインを頼んでました。まともな大人なんかい。

 

俺はあと1年で大学を卒業するけど、多分このおじさんは卒業しないだろうな。

とは言っても俺も就活とか一切してないので、行くあてもなくこの大学に戻ってくるかもしれない。

その時、まだこのおじさんはいるのだろうか。あるいはその時、俺がそのおじさんになっているのかもしれない。

ヒゲを伸ばそうかな。